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「真の商人は先も立ち、我も立つことを思ふなり」という名言は、梅岩の商人の道の本質を集約した言葉です。個人の利益のみを追求し、利潤のみをあくどく稼ぐ、個人主義・実利主義とは異なります。手島堵庵は利己心に対して本心という言葉を使いましたが、利己と利他が一体化した人間関係のありようを梅岩が問うていたことを、改めて想起したいものです。

 

個と普遍

ベラー先生によれば、石田梅岩には宗教的・道徳的思考が首尾一貫しており、人間の間には本質的な違いはないという普遍的な宗教的伝統が生きており、その倫理的、精神的源泉は未来に向かって活用できるはずであると力説されました。そして強力な倫理的背景、地域への義務感に根ざした新しい社会環境を創造する必要性を提言されました。

梅岩の学問と思想には、神道はもとよりのこと、儒教・仏教・道教などの教えが豊かにとり入れられていましたが、石田梅岩はいわゆる宗教家ではありません。

 

 

 

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