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また「日本でもアメリカでも神と自分たちの国は特別な関係があるという考え方」の共通性は注目しなければなりませんが、アメリカ人の「神」観念と日本人の「神」の観念には大きなひらきのあることも、みのがしてはなりません。そして現代の日本のいわゆる「鎖国主義の雰囲気」の背景には、アメリカを中心とするグローバリズムヘの反発があることもたしかです。

ベラー先生の提言には、なお吟味すべき点もありますが、二十一世紀の日本のめざすべき方向について、重要な問題が提起されていたことにかわりはありません。個人の尊厳を尊重することは、近代社会における人権の確立に不可欠の要素ですが、個人の利益のみを追求するような実用的個人主義には、多くの問題が含まれています。「われのみをよし」とする個人主義はエゴイズムとなり独善主義に陥ります。

石田梅岩は真正面から封建社会を批判したわけではありません。彼もまた封建社会の身分を肯定した「職分論」の学者でした。しかし「商人の道と云とも何ぞ士農工の道に替ること有らんや」として、「士農工商ともに天の一物なり。天に二つの道有らんや」と説いたその身分観には、身分をこえた万人平等観が重なっています。

 

 

 

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