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受講料が一切無料で、希望者はだれでもが受講できる開放性ばかりではありません。男女の差別がきびしかった当時において、女性にも聴講をすすめたことは、画期的なこころみでした。論説では世の中の刷新を力説していても、実際には女性を差別し、女性が学ぶことを排除していた学者の多い時代でした。その開講のことばに、梅岩がめざした学問のこころざしが私の胸にこだましました。

 

学問の背景

石田勘平は十一歳のおりに、父親の友人の紹介で京都の商家へ年季奉公にでましたが、十五歳の時に郷里へもどります。そして二十三歳で、京都の商家(呉服商)黒柳(くろやなぎ)家に、再び奉公にでます。『都鄙問答』に語られている「商人は勘定委(くわ)しくして、今日の渡世を致す者なれば、一銭軽しと云ふべきに非ず。是を重ねて富をなすは商人の道なり」の言葉も、奉公のなかでの体験にもとづいて蓄積された実感であったにちがいありません。

 

 

 

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