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「近代経営学」といっても、講義内容は人の道ですから、初めは意外に思ったでしょう。しかし、今の学生にとって、心の問題や生き方の問題と絡めて経営を考えるなどという機会はほとんどないでしょうから、かえって新鮮さを感じたのかもしれません。柴田鳩翁の『鳩翁道話』の中の具体的事例などを話すと、とても興味をもって耳を傾けてくれました。若い人たちは、こういうことに関心がないのではなく、接する機会がないだけだと感じました。ですから、われわれ親の世代が、もっと心学を学び、次の世代にわかりやすく説いていく努力が必要です。

基本的倫理の欠如した世の中、人の道をはずれたことが罷(まか)り通る社会では、若い人たちも希望をもつことができません。梅岩は「子を直そうと思うならば、まずわが身を正しくし、過去はすぐ改め、約束を守り、言行が一つになるよう教えることである。子どもは自然に親を見習うようになってくる」と語録で述べています。親の世代がまず率先して倫理を確立すること、それを通して社会に倫理的個人を育成していくことこそ、これからの日本に新しい光をもたらすものと確信しています。

 

 

 

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