もし、この自然の再生産能力を超えて、欲望のままに食べ尽くしてしまったら、結局は己が滅びることになるということを知っていたのです。
ところが、農耕を始め、村落が形成されるようになると、食物を自分たちの思うままに生産・貯蔵できるようになり、必ずしも自然に従わなくてもよくなった。その結果、人間は、それまで共生していた自然と切り離され、欲望を肥大化させながら社会を築いてきたのです。
しかし、個々人があまりにも欲望をふくらませすぎると、社会的に様々な問題が起こります。そこで、それまでのシャーマニズムではなく、倫理をともなった宗教が生まれたのです。キリスト教でもイスラム教でも仏教でも、戒律というものがあって、それらが、人間の欲望を抑制する役割を担ってきました。
やがて産業革命が起こり、近代科学が急速に発達します。科学では客観的事実のみが重視され、宗教で言われるようなことは迷信として否定されるようになりました。問題は、宗教離れによって、それまで宗教が担いできた倫理や道徳まで失ってしまったことです。近代科学においては、還元主義の立場をとり、すべてのものを物質に還元することで把握しようとします。