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石田梅岩が生きた小規模な商いの時代とは異なり、大企業を中心としたビジネスが主流である現在において、稲盛氏は明らかに梅岩に通じる商売の哲学をもっています。梅岩が強調した勤勉であることの大切さは、稲盛氏の考えの中にも繰り返し登場します。稲盛氏の著書 "A Passion for Success" (邦題は『成功への情熱』)は“努力”、“真の強さ”、“願望”、そして最後に述べている“決してあきらめない”ことなどのテーマが核となっています。この本の中で稲盛氏は、自分が長時間働くことでしばしば子どもたちに辛い思いをさせた、と語っています。他の家の父親が自分よりも早く帰宅し、一緒に遊んでいるのを子どもたちが知っていたからです。

 

しかし、経営者は自分自身の子供にとってだけではなく、多くの従業員やその家族たちにとっても父親であり、その大きな家族全員が安心して生活できるように責任を持って仕事をやり遂げていかなければならないのです。自分の子供たちには、そのために充分遊んであげられないということをよく話してあげるべきです。

(『成功への情熱』より)

 

 

 

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