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グループ内の結束力を生み出し維持していくことは今日では難しいものがありますが、たとえグループ内の結束力を維持しても、自分たちが大きな社会の一員であることを認識していなければ、社会的に有益なグループではなくなってしまうというわけです。自分たちとは異なった種類の他のグループとも結びついていく意識が必要なのです。

おそらく日本の社会では他の国よりも、グループ内の結束力と社会の一員としての意識が相反してきたのではないでしょうか。その結果、派閥間の争いやグループ間の非生産的な競争が生まれてきたのです。アメリカや日本を含め、国粋主義もまた現在、世界中で問題の種となっています。もちろん国粋主義には、自分たちだけの小さな派閥から抜け出してもっと大きな愛へと昇華させる側面もありますが。しかし国粋主義が抱える問題の一つは、自国内での結束力を強める一方で、他国への敵対心をしばしば煽(あお)ってしまうことです。今日では世界中で、日本でもそうだと思いますが、国粋主義は衰退しています。もし国粋主義が地球市民という意識や世界中で苦しんでいる人々との連帯感に置き換えられたならば、それは素晴らしい進歩となるでしょう。しかし大抵の場合、国粋主義が衰退してもっと大きな愛に置き換えられるのではなく、さらに偏狭な考え方が登場してくるものです。人間というのはとかく自分たち自身や所属するグループの利益ばかり追い求めるものであり、それが自国であれ他国であれ、他者への影響は考えないのです。

 

 

 

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