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上田 ありがとうございました。最後に戦後の教育には宗教心あるいはモラル、倫理というものが欠けていたのではないかというお話がございました。昭和二十二年(一九四七)三月に戦後の日本の教育の根本である教育基本法が施行されました。現在、政府はその見直しをしています。たしかに教育基本法第九条第二項には、公立学校で宗教を教えてはならないという、いわゆる政教分離の規定がはっきり書かれておりますが、もう一度読み直してみてください。第九条第一項には、宗教のもっている意味の重要性がはっきり書いてあるのです。

つまり、特定の宗教を国公立の学校教育で教えることは固く禁じていますが、宗教の社会生活における地位は教育上尊重しなければならないと明記されています。宗教に関することを教えてはならないということはどこにも書いてはいないのです。宗教と宗教心を混同してきた。教育関係者はそういう条項を無視してきた。そのように戦後の民主主義教育には出発当初から反省すべき点があったということを改めて痛感します。

今、心の問題が企業関係者の皆さん、政治家の皆さん、あるいは教育の現場で大変問題になっています。この問題に関しては、基調講演でベラー先生が言われたように、心学の中に、二十一世紀を生きる際に学ぶべきいくつかのインスピレーションが含まれているということと関わります。そして最後の質問に対するお三方のお話が、討論の最後のテーマである「二十一世紀に向かって私たちは何をなすべきか」へのヒントにもなっていると思います。

 

 

 

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