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最近ではセルビアのミロシェビッチ大統領が極端なナショナリズムを実施した例が挙げられます。現在、民族主義、ナショナリズムの印象は悪いのです。しかしナショナリズムには、いい面と悪い面の両方があったということです。

国民としてのアイデンティティー、国民としての意味があってこそ、やはり初等教育・中等教育というコンテクストとなると思うのです。そういったものがあってこそ尊厳の気持ち、あるいは目的意識が生まれます。しかしこの五十年間を考えると、日本でもアメリカでも、国民として目的をもたせるような教育はダメだという位置づけがなされていました。国としての教育のあり方は、それに代わるものが出てきていないと思います。

アメリカで今広がっている運動では、「モラル・エデュケーション(道徳教育)を学校へ」と言われています。「心を学校へ」ということになるかと思いますが、これは話題になると同時に議論が始まりました。洗脳とか思想統制という批判がすぐに起こったのです。しかし子どもを教育する際に、倫理的な、道徳的な原則がまったくない中で育てば、学校に銃を持ってきて人を撃つということが起こると思うのです。問題を提起するのは簡単ですが、答えはなかなか難しいわけです。

 

 

 

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