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近代化の促進による心学の衰退

稲盛 先ほど上田先生から、石田梅岩が活躍した当時、荻生徂徠をはじめとする日本のいわゆるオピニオンリーダー、思想家の方々から商人というものは非常に卑しい人種だとさげすまれたというお話がありました。たしかに事業をしているわれわれは商才、才覚があれば利益を社会からかすめ取るということもできます。学者の方は社会から利益をかすめ取ることは簡単にはできませんが、商売の場合、心ない経営者にはできるわけです。

例えば現在でも談合というのが行われています。つまりみんなで話し合って価格を決め、なるべく高く物を売りつけようというものです。正当な努力をしないで不当な利益を得たいという衝動がわれわれ商人の世界にあるわけです。ですから、商人、企業経営者の中にはつい欲望の誘惑に負けてしまうというケースがままあります。事実、そういう人たちがその当時も現在もあとを絶たない。そのために商人は、社会的に非常にさげすまれてきたのではないかと思います。

その中で梅岩は「利を求むるに道あり」という趣旨のことを言っています。

 

 

 

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