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心学というのは商人の道に関する問題であり、同時に天地の道の問題でもあるととらえればいいわけです。

石田梅岩は孟子の言葉を採って、「天においては二道なし」と言っています。究極的な生の形というのは、すべてに共通するものである。それは様々な状況、形態によって違うかもしれないが、究極的には道は一つだということです。心学というのは本質的に、いい社会、いい生を目指すものということであり、それが生きることの目的として重要だというわけです。

心学が求めるのは、心学を活用して生きることの意味、生きる目的を追求するということであり、なぜ他の人たちがいないと生きていけないのか、また、どのように人と関わっていこうとするのかということが問題であって、何が実用的で、何が実践的で、何が戦略で、どのような方法で生きていくのかだけが問題になってはならないということです。これは日本においてもアメリカにおいてもちょっと難しいテーマです。

 

上田 ベラー先生が言われたように「宗教」という漢字の熟語は中国の古典にも朝鮮の古典にもありません。明治二年(一八六九)のドイツ北部連邦との修好通商条約から翻訳語として日本でつくられた熟語なのです。

 

 

 

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