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人生の指針としての石門心学

小谷 私の祖父は、心学に大変傾倒しておりました。私どもの住んでおりました家の近所に、柴田鳩翁のお孫さんにあたる柴田謙堂先生、そして曾孫にあたる柴田實先生の家があり、祖父はしばしばお邪魔をして教えを受けていたようです。

ときどき病床で臥している寝床の上に座り直しまして、私と姉と妹の三人を寝床の前に呼んで石門心学の話をしてくれたわけです。おそらく十数回、講義が続いたと思います。私どもは小学生の低学年で、あまり理解力もありませんでした。ただ、足が痺れるのが困ったのを覚えているような次第です。六十年も前の話ですが、倹約をしなければならない、正直でなければいけない、よく働かなければいけないということを、子どもにもわかるような例を挙げて話をしてくれたのです。もちろん私どもだけではなく、同居しておりました十数名の番頭さん、丁稚さんも、一日の過酷な仕事が終わると、八時か九時頃から近くにある修正舎で勉強をしてこいと言って、よく出されていました。私もときどきついていったのですが、ここの話はもう一つわかりにくくて覚えておりません。

 

 

 

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