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上田 ありがとうございました。今、稲盛さんから、企業家としてご苦労されているときに、徳川幕府の封建社会の中で、商人に対する梅岩の高い評価に大変勇気づけられたというお話がありました。そして、さらに経済人としての倫理観をどう築いていくか。二十一世紀に向けての経済人のあり方を考える際に、今もなお梅岩に学ぶべきものがあるのだというお話を伺いました。梅岩の語録などだけを見ておりますと、梅岩がどうして商人の道を説いてすぐれていたのかがよくわからないと思いますので、ご参考までに若干申し添えます。

江戸におりました有名な儒学者の荻生徂徠―この人は徳川幕府のリーダー格の儒学者ですが、彼は『政談』という本の中で「商人は不定なる渡世の輩(やから)」、定まりのない渡世人であるという非常に低い評価をしています。あるいは『海国兵談』を書いた林子平は、「商人は無用の穀潰(ごくつぶ)しである」とひどくさげすんでいるわけです。そういう商人観の中に梅岩の商人観を位置づけますと、梅岩の商いの道に対する自信と意欲、そして誇りがより明確に浮かんでくるのではないかと思います。

先ほどのご紹介にもありましたが、今も京都には三つの代表的な心学講舎がございます。一つは明倫舎、一つは修正舎、一つは時習舎です。その修正舎の理事もしておられる小谷さんは、ご先祖から家の教えとして心学の教えを聞いてこられたということを伺っています。生活の中に、心学、梅岩の心をいかに生かすべきかという観点からお考えを承りたいと思います。

 

 

 

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