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近代化には常に目的と手段を取り違えてしまう危険性、手段を目的としてしまう危険性があり、これがまさに近代化の病の原因となっています。

日本が今直面している他に類を見ない難問、しかも他のどの社会も挑戦しながらもなしえない難問―それは経済がもはや主人ではなく、本当にいい社会の僕(しもべ)でしかない社会をつくりあげるということです。これは開発途上国では非常に受け入れがたい課題でしょう。なぜなら経済的に遅れているという思いのために、開発途上国は経済成長を第一の目標として先進国に追いつかねばならないとあせっているからです。日本は国民一人当たりでは世界一裕福な国です(いくつかのアラブの小さな石油王国は例外ですが)。したがって、日本は他の方法で世界の国々と競合することができるはずです。つまり限りない経済成長ではなく、他の国の人々をも奮起させるような素晴らしい生活の形を創造し、環境や住民を守り、尊重される社会を建設する。そういった意味で競争できるはずです。

絶え間ない経済成長とは違う、他のものに目を向けた社会を真剣に考えれば本当の疑問が生まれてきます。マルクス主義者たちは、結果がどうあろうとも利益の増大を要求することが資本主義の本質であると主張しました。

 

 

 

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