日本財団 図書館


ですからアメリカ人が外国語を勉強しない場合は、英語はどこでも通じるので別に他の言語を勉強しなくてもいいという、単なる怠けだと説明できるわけです。しかし、それ以外の気持ちもあります。それは外国語に対する恐怖心です。この恐怖心から「イングリッシュ・オンリー(英語のみ)」という運動が広がっています。これは公的な場で英語以外の外国語の使用が禁止され、公立学校において二ヵ国語の使用を禁止するという運動です。この「イングリッシュ・オンリー」運動は、英語は神聖な言語で守らなければならないという気持ちから発していて、まるで「汚染」を恐れているかのようです。

日本でも英語教育重視の結果、同様のことが起こっているのではないでしょうか。国際英語教育の実用性については、全員に英語教育をして役に立つのかとか、政治や経済のエリートのみ英語が堪能であれば十分だというように、いろいろと異議が出ています。しかしそれだけではなく、汚染を恐れる気持ちがあると思います。アメリカの外国語嫌いと共通していないでしょうか。

高階秀爾は昨年(一九九九年)の十月に発行された『ジャパン・エコー』で、「言語の独立性」の維持が心配だという懸念を表明しています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION