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アメリカ人は自分たちを「選ばれた民である」「神の新しい選民である」「救世主の国である」と考えてきました。聖書のイメージはアメリカの歴史を彩るもので、古くは植民地時代から始まっています。例えばニューイングランドの入植者は、自分たちは神に選ばれて荒野に向かい、丘の上に都市をつくるのだと言っておりました。また、十八世紀末にアメリカの共和国が成立したときに、世俗的には宗教的なイメージはどうなっていたかというと、合衆国の国璽(こくじ)にはラテン語で「世紀の新秩序(ノ・ヴァス・オドス・セクローラム)」というモットーが刻まれています。ヴェルギリウスの言葉ですが、新約聖書の意味合いを強く感じさせるものです。アメリカは世界の他の国々のモデル、自由な民主共和国となる、すべての民族の模範となる、という考え方です。

これはアメリカの歴史を連綿と流れる考え方で、戦時下においては、アメリカ人は光の子であり、敵は闇の子であると考えていました。今世紀の二つの大戦でも、また冷戦も同じようなとらえ方をしていました。冷戦中、アメリカ人の中には自分たちは自由な世界を導き、悪魔の帝国、すなわちソ連に対抗するという特別な使命を帯びていると考えた者もいました。

 

 

 

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