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しかし、最初は不遇であったにもかかわらず、梅岩は何千、何万という人々が学ぶ、後に石門心学として知られる運動を創設することができました。

梅岩の講釈の内容は特に朱子派の儒教、禅の伝統を汲む大乗仏教、天照大神に帰依する神道など、東アジアの精神性の偉大な伝統から引き出された道徳的なものでした。

梅岩の宗教的、道徳的思考の特色は首尾一貫した普遍性でした。

梅岩は徳川幕府の階級序列を自分の教えの中に受け入れ、置かれた地位において義務を果たすように人々に熱心に説きました。しかし、梅岩は人間の間に本質的な違いはないと考えました。心を実践する能力はみんながもっていて、そしてその心とは天と地の心と同一であると言いました。親に対する孝行を熱心に実践している貧しい農民のほうが、説教するだけで徳を実践しない学者よりも上であると梅岩は考えたのです。親に対する孝行心と忠誠心など、梅岩は特に人々が自分の地位の中で実践すべき儒教の徳を説きましたが、また普遍的な道徳的義務も力説しました。「広く人を愛し、貧窮の人をあわれみ…」と梅岩は説き、洪水や飢饉が起きたときは苦しんでいる人々のために慈善活動を組織しました。

 

 

 

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