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医に思う22]

 

最高の笑顔

 

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調幸治

しらべ内科整形外科院長

 

オリンピックを観戦しての最大の収穫は、マラソンの高橋尚子選手の"笑顔"であった。最高の笑顔を見た思いである。二十八歳の童顔であどけない笑顔の無邪気さ、勝っても高慢さを感じず、謙虚で自然なところがとてもチャーミングであった。

また、小出コーチとの二人三脚もすばらしい。親でも恋人でも、これだけ苦しいトレーニングを乗り切る信頼関係はないであろう。出会いが幸運であった。お互いに感謝すると言っていたが、コーチあっての彼女なのである。小出マジックと言われ、人間のもっている可能性、能力を引き出す才能があるのだろう。<Education>の語源そのものである。

一流の選手はみんないい顔と声をしている。メダルをとった選手はその中でも輝いている。いい顔とは端正さを言うのではない。目は心の窓といわれるように、目もとが特に心を表わす。気を感じる目、慈愛を感じる目、誠実な目、無邪気な目などである。目もと口もとが顔の表情の中心となる。それこそが、マックス・ピカートの言う「人間の顔」の中心である。

女性は、選挙は顔で選ぶことが多いといわれるがこれも直感による正しい選び方なのだと思う。人柄は顔に表われるのである。人相学そのものである。笑顔は"無財の七施"の一つである。赤ちゃんの笑みは人を幸せにする。特に、受験生もぜひ高橋選手をみならってもらいたいと思う。そして来春、最高の笑顔となれるように努力してほしいと思う。

マラソンも三十五kmぐらいがたいへん苦しいという。しかし苦しみの中で、その生活を楽しむゆとりが持てると勝負は勝ったのと同じである。過去の自分をふり返っても、負け犬とならないために、今がんばってほしい。

 

 

 

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