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2. 宮崎県との比較

 

ここでは、先進事例調査結果を宮崎県における検討の参考とするにあたり、両者の類似点、相違点を整理する。

 

(1) 地域特性・物流構造・品目特性

1] 産業構造および主要品目(類似点)

北海道、九州とも農業を中心とする第一次産業の比率が大都市圏と比較して高い一方、雑貨類(食料品、衣料品、日用品、家電製品等)の工場立地は三大都市圏に卓越している。このため、本州〜北海道、本州〜九州のいずれにおいても、下り貨物は雑貨類、上り貨物は農水産品が中心であるという点で、類似した構造を有している。

 

2] 海運利用の特性(相違点)

北海道は道路で本州と結ばれていないため、本州〜北海道間の輸送には、いずれかの区間で必ず海運か鉄道を利用する必要があるのに対し、本州〜九州間はトンネルや橋梁によって道路が直接結ばれていることなどから、トラックで陸送することが一般的である。

また、これと関連して、九州では南九州の農産品などを主な輸送対象とする地場中小トラック事業者が多数存在しているが、北海道では事業者数が比較的少なく、しかも札幌付近に集中しているという違いがある。

さらに、地域間の結び付きという点からも、北海道の農水産品は関東を主要市場としているのに対し、九州の農水産品は関西、中京、関東を主要市場としている。

こうした背景から、本州〜北海道間の輸送のうち、関東〜北海道間においては、海運利用時にトレーラーを利用した無人航送が一般化しているのに対し、本州〜九州間では海上輸送を利用する場合でも、運転手付きのまま、九州〜関西など一部区間でフェリーを利用する場合が多く、無人航送が発達していない。

 

3] 往復の貨物量の特性(相違点)

苫小牧港は、北海道の人口・諸機能が集中する札幌に近く、また、苫小牧および千歳周辺が物流拠点の集積する道内の物流の要衝となっている。こうしたことから、東京〜苫小牧航路では、下りの雑貨類の潜在的な輸送需要が大きい。

一方、九州では人口・諸機能は福岡付近に集中し、物流上の要衝も鳥栖周辺で、いずれも北部九州に位置している。この点で、札幌・苫小牧周辺と福岡・鳥栖周辺が類似した特性を有するのに対し、南九州は農産品や畜産品の出荷が盛んであるものの、下りの雑貨類は福岡・鳥栖経由の物流構造となっているため、関東等との幹線物流では、上りに特化した片荷構造となっている。

 

4] 農水産業の特性(相違点)

北海道では、農産品および牛乳・酪製品の出荷量が多いのに対し、宮崎・鹿児島の南九州では、農産品および畜産品が中心である。このうち、畜産品については、荷受け側の卸売業者の体制の問題や、翌日配送が可能な東北地方が競合産地となることなどから、関東向けの出荷において、出荷から翌々日ではなく、翌日夕方に納品することが求められる場合が多い。農産品や牛乳・酪製品の場合、こうした制約はあまりないことから、南九州における海上輸送のダイヤ設定上の制約条件の1つとなっている。

 

 

 

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