日本財団 図書館


第1章 調査の概要

 

1. 調査の背景と目的

 

わが国では、すでに65歳以上の高齢者人口が約15%に達しているが、高齢化の急速な進行により、2015年には国民の4人に1人が高齢者という超高齢社会の到来が確実視されている。高齢者、身体障害者等の自立と社会参加を一層促進する必要性が高まる中で、その移動手段の確保が社会的課題になっており、鉄道駅、車両等のバリアフリー化により高齢者、身体障害者等の移動の利便性や安全性の向上を促進する、いわゆる「交通バリアフリー法」が2000年(平成12年)5月に成立、同11月に施行された。今後は、同法への遵守に加え、高齢者、身体障害者等を含めて誰にでも利用しやすい交通手段の実現を目指す「ユニバーサルデザイン」の考え方も視野に入れて取り組む必要がある。

一方、周囲を海に囲まれ、離島も多い九州では、地理的に海上輸送の重要性が高く、中でも長崎県は、五島列島、対馬、壱岐をはじめとして多数の離島を有することに加え、本土も三方を海に囲まれ、多くの半島と湾から構成されている。このため、離島と本土を結ぶ航路、離島同士を結ぶ航路、熊本県等と結ぶ陸上交通のバイパス的航路、空港アクセス航路、観光施設へのアクセス航路や湾内遊覧航路等、多様な役割を持つ多数の海上旅客航路を有し、日常生活、業務、観光等において海上旅客輸送が非常に重要な役割を果たしている。特に離島地域においては高齢化が進展していることから、離島航路も高齢者の移動ニーズに的確に対応していくことが必要である。

こうしたことから、長崎県においては、高齢者・身体障害者等が円滑かつ安全に利用できるよう、海上旅客輸送のバリアフリー化を促進していく必要性が特に高い。現在、船舶・港湾等海上旅客輸送に関するバリアフリー化への取り組みは、全国的にも鉄道・バス等の陸上旅客輸送と比較して必ずしも進んでいるとは言えないことから、長崎県においては、海上旅客輸送のバリアフリー化に積極的に取り組んでいく必要がある。

本調査は、こうした背景を踏まえ、長崎県の海上旅客輸送におけるバリアフリー化の現状を把握するとともに、高齢者、身体障害者等の海上旅客輸送に対するニーズを把握することにより、長崎県における海上旅客輸送のバリアフリー化に対応した施設整備等の促進に向けて、旅客船事業者や港湾管理者等に求められる取り組みについて提言を行うことを目的とする。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION