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開花は早春から晩秋まで続いているが、ピークは4月下旬から6月上旬にかけての40〜50日間とみられる。また、7月中旬から8月上旬にも1割程度の開花がある。一方、結実については完了までの期間がまちまちであるため、実が完熟した時点の集計で比較すると10月中旬から11月中旬の約1ヵ月間に集中する傾向が表れている。

2] シダ植物の特性

調査区域内で16種類のシダ植物について芽ばえの状況を記録した。シダ植物では栄養葉と胞子葉を別々に展開するタイプがあるが、今回はすべて栄養葉の生育を基準に調査を行った。

早いものでは、4月中旬にゼンマイ、ヘビノネゴザが新しい芽をのぞかせ、その後5月下旬までにはほとんどのシダが新葉の展開を終えている。イタチシダの仲間やゲジゲジシダ等は比較的遅いタイプである。

3] 草本植物の特性

シダ以外の草本植物は251種を対象とし、開花の始まりから完了、結実の始まりから完了(完熟)までを記録した(資料編:表(資)-I-2)。

全般的な開花の状況(図I-1-5)をみると、3月下旬より開花植物が増加し、11月中旬まで続いている。この間、5月に第一のピークがあり、7月上旬まで一度減少した後再び増加しながら9月下旬に第二のピークがみられる。4月から6月にかけては、ネデシコ科、キンポウゲ科、バラ科、スミレ科、シソ科、ゴマノハグサ科、キク科、ユリ科、カヤツリグサ科等が主体であるが、9月になるとタデ科、マメ科、シソ科、キク科、イネ科植物の開花が目立って多くなる。

結実については6月から7月にかけて若干の増加がみられるものの、その後は低いレベルで推移し、10月下旬から11月中旬の間に完熟期を迎えている。

(3)花ごよみのパターン

多くの植物は春に展葉を完了し、その後開花から結実へと移行する。しかしこのような一般的なパターンと異なる生活様式をもつ植物も少なくない。狭山丘陵でみられる代表的なタイプについて図I-1-6に示した。

1] 展葉に先だって開花するタイプ

冬枯れの雑木林で、早春から花を咲かせる植物がある。木本類のハンノキ、コブシ、ヒサカキ、アオキ等がその代表で、タチヤナギやアセビ等でもそのような傾向がみられる。草本類ではスゲ属の一部の種やシュンラン、サイハイラン、コケイラン等で開花後に新葉が展開するタイプがみられるが、いずれも常緑性の植物である。

2] 展葉と開花がほぼ同時に進行するタイプ

木本の風媒花植物によくみられるタイプである。その典型的な例が落葉樹のアカシデ、イヌシデ、コナラ、クヌギ等で、また常緑樹ではアカマツ、シラカシ、アラカシデ、イヌシデ、コナラ、クヌギ等で、また常緑樹ではアカマツ、シラカシ、アラカシ等にみられる。動物媒花植物ではヤマザクラやイヌツゲも同じような特徴をもっている。

 

 

 

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