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狭山丘陵の里山

 

I. 里山の自然と文化

 

1. 狭山丘陵の自然

1)狭山丘陵周辺の雑木林の孤立林化と生物多様性の保全

(1)はじめに

大都市圏に位置する狭山丘陵周辺地域では、1960年代以降主として二つの理由から、それまで広く分布していた雑木林の面積は急激に減少した。一つは農用林としての役割を喪失し他の利用が模索されていたこと、ふたつには都市化の波が押し寄せて来たことである。

雑木林の面積の減少には、絶対的なそれとともに、残存林の細分化も進行した。細切れにされた雑木林が新たに形成された市街地のなかに孤立して存在するという状況が作りあげられた。それはあたかも市街地を海に例えれば、そこに浮かぶ島を彷佛させる。そこでこのような分断され、孤立した雑木林を孤立林(Forest Island)と呼んでいる。

ところで、雑木林の魅力のひとつは、固有の生物多様性にある。孤立林になったとき、そして管理がされなくなったときその生物多様性にどのような変化があらわれるか、これは雑木林保全にとって大きな課題である。

この度の調査では、狭山丘陵周辺に残存するさまざまな面積の孤立林について、林分あたりの林床植生の種数を調べ、さらに種の多様度を算出し林分面積との関係を明らかにした。

(2)調査地

調査した孤立林は埼玉県所沢市、同入間市、同三芳町、東京都小平市、同東村山市、同瑞穂町から選んだ計24林分である(図I-1-1)。行政区により数に偏りがあるが、サンプル数が多いところは孤立林が多いというだけの理由である。

林分は、1例を除きコナラ林である。1例はアカマツ林である。林分の面積は、最小のもので676m2、最大で53,367m2である。形状もまちまちで、外周/面積で示すと0.030から0.173にわたっている。

調査した林分の林床植生は、5例がアズマネザサの優占する群落(これをササ型林床という)であり、13例がアズマネザサ以外の種が優占する群落となっている(これを非ササ型林床という)。また残り6例は、一部非ササ型、一部ササ型であるが、全体としてみると前者がより多く広がっており、ここでは非ササ型に含めた。

(3)方法

調査対象の孤立林のほぼ中心を通るようにメートル縄を引き、それに沿って1m×1mのコドラートを設置して群落調査をおこなった。測定項目は被度、自然高、頻度である。

 

 

 

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