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供給された燃料の発熱量は、有効な仕事、即ち軸出力として取り出されるもの以外は、大部分が排気損失と、冷却水損失として失われている。これらに費やされた熱量の割合を算出したものを熱勘定という。ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンの熱勘定を1・9図に示す。

3) 燃焼の過程と圧力変化

燃料噴射弁から燃焼室内に噴射された燃料の粒子は、高温高圧の空気によって加熱されて温度が上がり、気化が始まって着火燃焼する。その時間は極めて短時間であるが、その間にクランク軸は相当の角度を回転する。燃焼によるシリンダ内の圧力変化とクランク軸の回転角度を示すと1・10図のようになる。A点で燃料の噴射が始まるが、すぐには着火されず、燃料が気化されて着火温度に達し着火するB点まで、しばらく時間を要する。このA点からB点迄の期間を「着火遅れの期間」と云う。B点で着火すると、今までに噴射された燃料が急速に燃焼して最高圧力のC点に達する。燃料の噴射はD点で終わるが、それまでに完全に燃焼しきれなかった燃料は、その後の膨張期間中(D点〜E点迄を後燃え期間と云う)に燃焼しE点で燃焼が終わる。

 

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1・10図 ディーゼルエンジンの燃焼

 

4) ディーゼルノック

ディーゼルエンジンは、前項で記した如く、燃焼室内に噴射された燃料が即着火するのではなく着火するまでに時間的な遅れが生じる。着火遅れ期間が長くなりすぎた場合、この着火遅れ期間中に噴射された燃料が、着火と同時に一度に燃焼するため、燃焼圧力が異常に高くなり、衝撃波が発生して、機械部分を激しく振動させる甲高い打撃音が発生する。この音をディーゼルノックという。

 

 

 

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