A重油はその90%以上が軽油分であるがC重油は基材となる残査油の粘度と、軽油等の低粘度油との混合割合で必要な粘度が決まるので、その組み合わせは無数にある。
3) 分解重油の製法と注意
前述の常圧蒸留装置(或いは減圧蒸留装置)では軽質留分の比率が少なく、50%程度は残査油として残る。
一方近年は、ガソリン、軽油等の需要が増大しておりこの需要のバランスを確保するために残査分から軽油分、軽油分からはガソリンを取り出している。これが分解法と呼ばれるもので、この分解法(流動接触分解=FCC、熱分解=ビスブレーキング)で作られた製品には頭に分解を付け分解重油と呼び、蒸留法による製品を直留重油とか頭に直留を付ける。
その製法は2・185図の通りで、直留に比べ精製のより下流にあるため各成分が濃縮された形で密度が高く、硫黄分、残炭分、そしてバナジュウム、ナトリウム等の有害配分の比率が高くなっていることが特徴である。
流動接触分解で作られた重油はFCC油と呼ばれ、触媒のシリカ−アルミナが油中に残存してその硬い金属自身が燃料ポンプやピストンとシリンダライナの狭い間に入り物理的な摩耗を短時間の内に起こすので、C重油使用船では補給の際に注意が必要である。同様に分解軽油は直留軽油に比べると密度が高く着火、燃焼がしにくい特性をもっている。基本的には、分解重油は以上のような理由からボイラ用として使用され、船用としては使用しないことになっているが、外国では舶用機関に供給されたことがあり、国内では陸用のディーゼルエンジンに使用される可能性がある。