日本財団 図書館


(ア) 散策モデルコースの設定

コースの設定自体は、最も経費のかからない事業である。産業観光推進委員会に結集した一人ひとりが、自分たちの住む地区の魅力的な景観や施設などについて語り合い、いかにすれば外から訪れる人に、自分たちの地区の魅力を伝えるか知恵を絞り合うことで、モデルコースの素案はつくることができる。ここに外部からアドバイザーを入れるなどして整理していけば、より望ましいコース設定が可能となる。

モデルコースが設定できたならば、このコースを示すパンフレットや地図を作製し、これを訪れる観光客に周知できるようにすることが、次に取り組む事項となる。パンフレットの解説には、地区の古老に聞いた地区の昔話なども入れると、地区住民にとっても思いがけない、興味深い物ができるかもしれない。また、地図などのデザイン、イラストについても、地区に住む高校生の参加を得るなど、できるだけ地区住民の力により手作りで作成する工夫が求められる。

さらに、モデルコースを実際に路上で示す案内板のデザイン・設置なども、その次に取り組む事項としてあげられる。

 

(イ) 窯元見学の受け入れ体制

観光客の要望として多いのが、実際に陶磁器を製作している現場をみたいという声である。こうした生産現場を体験してもらうという点こそが、産業観光の根幹でもあり、陶磁器を核とした産業観光を推進していくうえでは、窯元見学の受け入れ体制の整備は、不可欠である。

受入可能な窯元同士でのローテーションの調整、外部からの問い合わせへの対応、見学者への説明要員の確保など、個々の窯元では対応しにくい面もあり、組織的な対応が必要である。

例えば、外部からの申込の受付や問い合わせへの対応は、ホームページなどを通じて観光協会が行い、各地区内での調整などは、工業組合が行うなどが考えられる。なお、このように複数の組織が関わってくることがありうるので、先述の産業観光振興推進委員会には、こうした組織も参加していることが望ましい。

 

(ウ) リタイヤメント・マイスター制度

観光客の入り込みに誰が対応するのかという問題の解決策として、陶磁器の生産にかつて携わっていた方々の活用が考えられる。陶磁器製造における昔の苦労話などを交えながらの観光ガイドや窯元見学案内、作陶指導などは、観光客にとっては強い印象が残るし、また、こうした活動を行う高齢者にとっても、自らの生きがいにつながる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION