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上記は、専門性を有する経営者に加え、様々なアイディアや考えを有している人材がいることを証するものである。

おそらく、町の文化、歴史、産業の推移などを詳しく知る人材も存在することであろう。

まさしく、小淵沢町は人材の町であると言える。これをどのように場の力にしていくか、リゾート・観光という視点に立つとき、この人材の賦存は大きな意味を持つ。すなわち、他地域との差別化、競争力を有する源泉となりえる可能性が高い。個々人の力をどのように場の力にしていくか、そのためには求心力あるいは求心力を作りえる機会が必要となっている。

 

(3) 多様な背景を持つ町民の結集

まちおこし、まちづくりにおいて観光を主眼にすえる地方公共団体は多い。若年労働人口の流出、農業の衰退など課題を抱える中、豊かな自然など地域資源を活かして外から人を呼び込もうという取組み自体は、主要な産業を持たない地域にとっては、振興手段として注目を受けやすい。

しかし、せっかくの取組みも、一部の観光業者や商業事業者しか潤わない、地域住民とは関係なく観光化が進められた結果、肝心の地域住民への視点がおざなりになり、商店街が衰退し、住民は自分の町の中で買い物すらできないといった状況になりつつあることも多い。

本調査研究で提案した「小淵沢を考える会」は、小淵沢町に住む多様な背景を持つ住民が集まり、町をどうすべきか、現時点で何ができるかについて、「自分の町」を見詰め直すことを通じて求心力づくりのきっかけとなることを意図したものである。

 

調査の過程では、「意気に感じて物事を進める町民が少なくなった」という指摘も出ている。しかし、問題意識を持つ町民が決していないわけではない。理念を持って小淵沢町に立地する企業、ベンチャー経営者などもこの町には多い。要はそうした町民が自分の意見、考えやアイディアを集って語る場がないことが問題である。同業や集落といった境界を越え、行政とは異なる視点、事業手法、チャレンジ精神などを発揮する機会と場を創る意味で「小淵沢を考える会」を立ち上げる必要がある。参加は基本的にはボランティアであるが、あくまで町民の自主性に委ねていく。

 

 

 

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