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4 生涯学習によるまちづくり

(1) わが国における生涯学習

わが国では、「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会」と生涯学習社会を定義し、その構築を目指している。この生涯学習社会が求められる背景、取組みの一層の充実が求められる理由としては、

1] 学歴社会の弊害の是正

2] 「社会の成熟化」に伴う学習需要の増大への対応

3] 「社会・経済の変化」に対応するための学習の必要性

4] 家庭や地域社会の教育力の再生・向上

の4点が挙げられる。

生涯学習社会の定義で用いられる学習の範囲は、学校教育、社会教育のほか、スポーツ活動、文化活動、趣味、レクリエーション活動、ボランティア活動にまで及び、他の先進諸国に比べ広範囲にわたっている。これは、生涯学習の振興理由が、多くの先進諸国において「経済的反映のための手段」という側面のみが強調されているのに対し、わが国では、心の豊かさや生きがいといった「精神的な豊かさ」が振興理由に加えられているためである。

平成12年4月に地方分権推進一括法が施行され、地方分権型社会への転換が図られるなかで、「個性豊かで活力に満ちた地域社会」を国と役割を分担し実現していくため、住民に身近な市町村が自主性及び自立性を高めることが求められている。地方公共団体が自立性を獲得するためには、“人づくり”や“意識改革”が不可欠であり、こうした“まちづくり”のための“人づくり”の面からも生涯学習の重要性はますます高まってきている。

 

(2) 「生涯学習のまちづくり」から「生涯学習によるまちづくり」へ

全国の市町村では、“行政の各部局が連携しながら、まち全体で生涯学習に取り組む体制を整備していこう”という趣旨の、臨時教育審議会における第3次答申(昭和62年)に沿って、生涯学習による地域社会の活性化、言い換えると「生涯学習を進めていくまちづくり」を目指してきた。しかしながら、この「まちづくり」の取組みは、多様な学習活動の実践までで終わっているところが少なくなく、学習成果を活用した地域づくり活動につながっていない。このため、まちづくりという面で必ずしも十分な成果を挙げてきたとは言えない。

こうした状況を踏まえ、生涯学習審議会答申「学習の成果を幅広く生かす」(平成11年)では、生涯学習の振興によって、とりわけ住民が生涯学習の成果を生かすことによって、地域社会の活性化、まちづくりを進めることに積極的に取り組む必要があると言及しており、「生涯学習によるまちづくり(学習成果のまちづくりへの活用)」へ意識を転換する必要性を説いている。

このように、地域社会の課題を解決し地域を活性化する上で、住民の意識的な問題解決型の学習が重要な役割を果たすため、学習成果がまちづくりに生かされる仕組みの整備が課題となっている。

 

 

 

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