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(12) 本件の争点となった、1964年に制定されたイタリア法は、新しいバナナに対する消費税を導入した。原告は、この消費税がGATT及びACP-EEC条約違反であることを理由に、税の支払いなしに輸入を認めるよう訴訟を提起した。GATT及び第四次ロメ協定が、矛盾する国内法の適用を国内裁判所で争うことができる権利を個人に付与するか否かについて、判決は、Commission v. Council事件判決(Case C-280/93, [1994]ECR I-4973)が、GATTに言及した部分を引用し、加盟国規定の適用を争うために、国内裁判所でGATTの規定を援用することはできないと判断した([1995]ECR I-4533, at I-4566, para. 29)。しかし、ロメ協定については、直接効果を生じる条文を含みうることを認めている。

(13) 須網・前掲注(6)、25頁以下。

(14) 中西優美子「EC企業法判例研究22・共同体法秩序と国際経済法秩序の対立」国際商事法務29巻1号92頁(2001年)。

(15) Everling, Will Europe Slip on Bananas? The Banana Judgement of the Court of Justice and National Courts, 33CMLRev. 401 (1996).

(16) Eeckhout, The Domestic Legal Status of the WTO Agreement: Interconnecting Legal Systems, 34CMLRev. 34(1997).

(17) Neuwahl, Individuals and the GATT: Direct Effect and Indirect Effects of the General Agreement of Tariffs and Trade in Community Law(Chapter18), in The European Union an World Trade Law,After the GATT Uruguay Round 313 (E.O'Keefe ed. 1996).

(18) Cheyne, supra note 1, at 585.

(19) Neuwahl, supra note 17, at 326.

(20) 岩沢雄司『WTOの紛争処理』212頁(三省堂、1995年)、小寺彰『WTO体制の法構造』20頁(東大出版会、2000年)。

(21) Brand, supra note 6, at 604; Cheyne, International Instrumments as a Source of Community Law(Chapter17), in The General Law of E. C. External Relations 254, at 269(A. Dashwood and C. Hillion ed. 2000).

(22) Neuwahl, supra note 17, at 325.

(23) 平覚「WTO関連協定の直接適用可能性−EC法からの示唆−」日本国際経済法学会年報第5号15頁以下(1996年)。

(24) 同事件において、オランダ政府は、理事会指令を根拠とする、日本原産の水産品の輸入を禁止する保護的措置を定めた委員会決定を国内的に実施するために、国内法を改正し、本件原告に対する輸入許可を拒否した。そこで本件原告は、国内裁判所に輸入拒否決定の仮差止を求め、そこで委員会決定のWTO協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)違反を主張し、その直接効果が争点となった。

(25) 1998年のT. Port v. Hauptzollamt Hamburg-Jonas事件判決の原訴訟も、第三国からのバナナの輸入者である個人が、加盟国の関税当局相手に起こした訴訟であったが、同判決も、直接効果について判断しなかった(Joined Cases C-364/95 and C-365/95, [1998]ECR I-1023)。

(26) 同事件は、Hemesの有する商標権に関する私人間の訴訟であり、Hermesは、オランダでの商標権者であった。同社は、FHT社が、模造品を販売していると判断して、FHTの商品を差押、FHTの商標権侵害の仮差止めを国内裁判所に求めた。そして、その手続きの中で、国内裁判所は、民事訴訟法289条に規定された仮の措置は、TRIPS協定50条に言う「暫定的措置」という表現の範嗜に該当するのかを先行判決手続により欧州裁判所に尋ねた。

(27) 同事件では、ポルトガルが、GATT1994を始めとするWTO協定違反を理由に(para. 25)、ECとパキスタン、ECとインド間の合意締結のための理事会決定の無効を求めた。判決は、紛争解決了解3条7項(違反措置を直ちに撤回することが実際上不可能である場合には、暫定的に補償が与えられる)、同22条1項(DSBの判断が合理的な期間内に実施されない場合には、補償が暫定的に利用可能である)、さらに同22条2項は、相互に受け入れられる解決を見つけるために、違反国と提訴国が交渉することを規定していることを各指摘している(para. 37-39)。

 

 

 

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