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第6章 地方公共団体における協定遵守の問題構造

 

1 はじめに

第2章において述べたとおり、近年、地方公共団体の調達において外国政府等から政府調達協定上の問題点を指摘された事例が急増している。そして、協定上の問題点の指摘を受けた地方公共団体は、総務省や外務省の助言を踏まえながら、自主的に入札公告や入札をやり直すことにより問題を解決してきた。しかし、今後、外国政府等が協定上の問題点を指摘した場合において、外国政府等の指摘に関し、国と地方公共団体がそれぞれ異なる協定の解釈を主張する場面も考えられる。

そこで、本章では、このような場面において、国と地方公共団体がそれぞれどのような対応をとることができるかについて、国内法令の遵守が問題となる場合と協定の遵守が問題となる場合に分けて検討していくこととする。

 

2 国内法令遵守の担保措置

(1) 事例

〔概要〕

外国政府が地方公共団体の調達に関し政府調達協定上の問題点を指摘したが、その問題点は特例政令規定事項であった。当該指摘事項に関し、国は特例政令に違反するおそれがあると判断したが、当該地方公共団体は特例政令に違反しないと主張した。

〔問題の所在〕

このような事例の具体例としては、地方公共団体(以下では、議論を簡略化するため、地方公共団体が都道府県の場合とする。)が協定適用対象の調達に関し、随意契約を行ったところ、外国政府が協定第15条の限定入札(我が国では随意契約に相当)の要件に該当せず、協定違反であると指摘した場合がありえる。

この場合、随意契約の要件は協定規定事項であると同時に、特例政令第10条が規定する事項でもあるため、我が国においては、協定違反の問題としてではなく、むしろ特例政令違反の問題として、問題が顕在化することとなる。

 

(2) 助言・勧告と是正の要求

特例政令等の国内法令について、国と地方公共団体が異なる解釈を主張する場合、地方自治法(以下、自治法とする。)に基づき、国は地方公共団体に対して一定の関与をすることができる。

地方公共団体の調達事務は、自治事務であるため、国は、まず自治法第245条の4第1項の規定により、地方公共団体の事務の運営について適切と認める助言・勧告を行うことができる。ただし、この助言・勧告は、地方公共団体に法律上の改善義務を生じさせるものではない。

次に、国は、自治法第245条の5第1項の規定により、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき等は、当該都道府県に対し、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。そして、自治法第245条の5第5項の規定により、是正の要求を受けた地方公共団体は、是正改善の措置を講ずべき法律上の義務を負うこととなる。

これに対し、地方公共団体は、自治法第250条の13第1項の規定により、国からの是正要求に不服があるときは、国地方係争処理委員会に対し、国を相手方とする審査を申し出ることができる。

 

 

 

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