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(4) いわゆる「教育自治」

いわゆる教育自治について、それにたずさわる職員数から解説することにする。図表3-3に示した通り、教育委員会および教育庁には、およそ6万人の地方公務員がいる。地方教育に従事するものはそれだけではない。図表3-6に明らかなように、他にそれを遥かに上回る数の国家公務員がいるのである。

 

図表3-6 地方教育機関等におく国家公務員数(2000年2月現在)

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出典:2000年2月改正の大統領令「地方教育行政機関及び公立の各級学校におく国家公務員の定員に関する規程」。

 

図表3-6の国家公務員は、1991年3月制定の地方教育自治に関する法律第42条第2項などに基づいておかれたものである。それによれば、広域地方自治団体の教育・学芸に関する事務の執行機関である教育監の補助機関(教育監およびその補助機関=地方教育行政機関=教育庁)、教育監がその所管事務の範囲内で必要なときに大統領令または当該地方自治団体の条例の定めるところにより設置することができる教育機関(学校等)、そして広域地方自治団体の教育・学芸に関する事務を分掌せしめるため1ないし2以上の市郡区を管轄区域とする下級教育行政機関=地域教育庁(例えば、ソウル特別市東部教育庁)には、「地方自治団体におく国家公務員の定員に関する法律にかかわらず大統領令の定めるところにより国家公務員をおくことができる」とされている。なお、大統領令の地方教育自治に関する法律施行令によれば、1998年4月以降、16教育庁の下に、国家公務員たる教育長を長とする、合計180の地域教育庁がある。

地方教育自治に関する法律は、1995年7月の改正を通して、地方自治団体の教育・学芸に関する事務を広域地方自治団体の事務とすることにより、その間、名目的に認められていた市郡区の教育事務等は取り上げられてしまった。2000年1月に全面改正した現行の同法律によれば、広域地方自治団体の「教育・学芸に関する重要事項を審議・議決するため」、各広域地方自治団体に7人ないし15人の教育委員で構成する教育委員会をおく。そして、教育委員は初中等教育法でいう各学校運営委員会の委員により選出する。

教育・学芸に関する事務につき、教育委員会の審議・議決するものは、広域地方自治団体の議会に提出する条例案、予算案および決算、基金の設置・運用、重要財産の取得・処分、公共施設の設置・管理および処分など広範囲におよんでいる。この審議・議決機関と機関対立させるべく設けられたのが上記の教育監である。教育監は、教育委員同様、上記の学校運営委員会において選出する、間接公選の市道公務員たる教育監は、国家行政事務のうち広域レベルに委任して施行する教育・学芸事務にあたるほか、広域地方自治団体の教育・学芸事務に関する条例案の作成、予算案の作成、決算書の作成、教育規則の制定などを所管している。この教育監への機関委任事務を確保するために1995年7月に設けたのが職務履行命令訴訟制度である。

なお、同法律は、第38条で「教育・学芸に関する経費は教育に関する特別賦課金・手数料・使用料その他の教育・学芸に関する財産収入、地方教育財政交付金、地方教育譲与金、及び当該地方自治団体の一般会計からの転入金(繰入金)、その他の教育・学芸に属する収入で充当する」とした上、同第40条において、広域地方自治団体の「教育・学芸に関する経費を別に経理するため当該地方自治団体に教育費特別会計をおく」とした。

要するに、いわゆる「教育自治」は、これを大まかにいえば、59,608人(図表3-3)+269,227人(図表3-6)=328,835人の職員と、年額156,582億ウォンの歳入予算(図表3-8)で営まれているが、そのうち、職員の約82%は国家公務員であり、歳入予算の85%前後は国からの移転財源で賄われているのである。

 

 

 

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