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(2) WTO協定の構造

WTO協定の構成は図表1-1のとおりであり、WTO設立協定と同協定に附属する諸協定から構成されている。

まず、WTO設立協定では、従来GATTの対象とされてこなかったサービス貿易、知的所有権等の新しい分野を含むウルグアイ・ラウンド交渉の成果を包括的に実施する制度的枠組みを創設するため、国際機関としてのWTO(世界貿易機関)を設立し、WTOの任務、組織、地位等を規定している。WTOは法人格を有しており、その機構については図表1-2のとおりである。

このWTO設立協定に附属する、ウルグアイ・ラウンド交渉の成果である諸協定の1つは、付属書1Aの「物品の貿易に関する多角的協定」(1994年のガット等13本の協定)である。その中には、農業貿易についての規律を強化した「農業に関する協定」のほか、スタンダード協定、TRIM協定及び補助金協定が含まれている。

これに対し、附属書1Bの「サービス協定」及び附属書1Cの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)は、サービス貿易(金融、運輸、旅行、通信等)や知的所有権(特許権、著作権、商標権等)など従来対象としてこなかった新しい分野についての規律を策定したところである。

また附属書2では「紛争解決に係る規則及び手続に関する了解」を定め、WTOの下での紛争解決手段に従わない一方的措置を明確に禁止するなど、紛争解決メカニズムが強化された。同了解は、WTO協定に関するすべての紛争について原則として統一的に適用されるため、従来のガットに基づく一般的な紛争解決手続と東京ラウンド諸協定の紛争解決手続というニ重構造は解消された。

附属書3は、WTO加盟各国の貿易政策を定期的にレビューし、多角的自由貿易体制の機能の効率化を図る「貿易政策検討制度」(貿易政策レビュー・メカニズム)を定めている。

WTO協定の下では、「WTO設立協定」と「附属書1から3までに含まれる各協定・了解等(17本の多角的貿易協定)」は不可分一体のものとして扱われ、WTOの加盟国となるためにはこれらのすべてを一括して締結・受諾しなければならない。自国にとって利益のある協定には入るが、不利益な協定には入らないというようなことはできず、一括受諾方式(シングル・アンダーテーキングの原則)が採用された。これにより従来のガットにおける複雑な法的関係が克服され、WTOの下では加盟国間の権利義務関係が同一になり法的関係が明確になった。

なお、ここまでが「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定及び同協定の附属書1、2及び3」として、わが国においても1995年の第131回国会で承認を得たところである。

 

 

 

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