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2] 所得・消費・資産の課税バランス論と地方税の充実

国税・地方税を通ずる税制改革の理念の一つに、所得・消費・資産の課税バランス論がある。地域社会で生産し消費し生活している以上、住民はそれぞれの局面でバランスよく税を負担してもらう必要があり、またその方が、租税回避を防ぐにもよいのではないかと考えられる。

日本の地方税体系では、国際的に見ても消費課税のウェイトが低いという特徴を有している。また、国税との比較でも、地方税は消費課税に比べて所得課税に偏っており、国の財政が所得再分配機能や経済安定化機能を有するのに対し、地方の行政サービスは安定的な供給が求められる点を考慮すると、この偏りは一層問題である。

地方消費税は、地方分権の推進や、少子・高齢化に伴う幅広い財政需要を賄う税として、今後充実することが必要であることは言うまでもなく、その際、バランス論が重要な論拠となることは間違いない。

ただし、国から地方への税源移譲を推進するという観点からは、所得・消費・資産のバランス論だけでは必ずしも十分ではないのではないか。地方の行政サービスの種類によって、受益と負担の対応からも望ましい税のあり方は変わってくる。

地方消費税充実の議論を行うに当たっても、所得・消費・資産のバランス論のみならず、今後少子高齢社会において、地方に求められる行政サービスのあり方を踏まえ、この行政需要を賄うには一般消費課税がふさわしいという議論を、より一層掘り下げていくことが適切である。また、所得課税において税源移譲を実現するためには、バランス論以外の論拠を必要とすることは当然である。

 

 

 

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