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7. 名古屋市の都心居住施策について

 

名古屋市総務局企画部企画課長 山田雅雄

 

はじめに

戦後半世紀以上を経て、産業の集積と人口流入により都市が急速に発展・拡大する都市化の時代は終焉を迎えつつあり、本格的な成熟社会の到来を背景に、これまで先人の努力により築かれてきた都市基盤を有効に活用しながら、都市を使いやすく運営する時代へと移行しつつある。

本市では、人口増加や都市化の急速な進行に対応して、市の周辺部で土地区画整理事業などにより開発が計画的にすすめられてきた結果、市全体として都市基盤が整った良好な市街地が形成されてきた。

一方、都心部とその周辺の既成市街地においては、復興土地区画整理事業などの市街地整備事業により都市基盤は概ね整備されているが、人口減少と高齢化が進み、コミュニティの崩壊や活力の低下といった問題が顕在化している。

数年後には、本市の人口が減少に転じることが想定されていることなどを踏まえ、今後は、都心部や既成市街地にも目を向け、都市基盤をはじめとする既存の公共施設の活用をはかりながら市街地の更新・改善に重点的に取り組む必要がある。

そのため、都心部全体のまちづくりのビジョンを示し、それに沿った個人の建替えや、民間再開発による住宅供給策などを誘導することを本市の都心居住施策の中心に据えて、施策の展開をはかることとし、一部に残る都市基盤の整備が十分でない地区については面的な市街地整備の手法で対応している。

本稿では、都心居住の観点からそれらの事業、誘導策について実施状況を紹介し、今後の方向について考察する。

 

1 都心の構造と現状

(1) 都心域と都心核

名古屋の都市空間は、熱田の宮と名古屋城を結ぶ南北軸と碁盤割の旧城下町を中心に、外側に向けて都市基盤の整備とともに拡大してきた。

 

 

 

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