第2章 各論
1. 東京都における都心居住政策の現状と今後の方向性
東京都政策報道室計画部
計画担当副参事 邊見隆士
1 これまでの都心居住政策と現状
(1) 都心居住政策の変遷
(戦後から高度成長期)
戦後1946年の戦災復興都市計画では主要目標の1つに「職住近接」が掲げられていたが、戦後復興が進むなか、むしろ区部に集中する人口を産業とともにどう分散するかに主眼が置かれるようになった。
区部周辺の市街化をくい止めるため、第1次首都圏基本計画でグリーンベルト構想が提示されたものの、有効な施策には結びつかず、スプロール化が進行していった。当時は、住宅そのものが量的にも質的にも不足していたため、多摩ニュータウン建設の基本方針が、1964年に決定された。1968年にはグリーンベルト構想に代わって計画的な市街地の展開を図るため、第2次首都圏基本計画が策定された。
(高度成長期から現在へ)
東京の住環境は主に郊外を焦点とした政策が講じられてきたが、1980年代に入ると、地価の高騰などから区部を中心にファミリー世帯の流出、人口の急激な高齢化などが進行し、人口の減少や地域活力の低下を防ぐといった観点から、都心における居住機能の回復が求められるようになる。鈴木都政における「東京都長期計画」では、環7内側を職住近接を目指すべき区域とした。
しかし、その後も都心3区を中心とした人口の空洞化に歯止めがかからず、中央区などでは住宅付置義務に関する指導要綱が策定されるなど、人口回復への取組みが行われた。
国でも1990年、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(以下、「大都市法」という。)が改正されるなど、都心居住に関する各種都市計画制度や事業手法が整備・充実される。1995年には、大都市法に基づき、環7内側を都心居住推進地域に指定、さらに環6内側については特段の容積率の緩和なども行いながら、高層高密度の住宅市街地形成を図っていくこととした。