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表4.1 軌跡の側面:状況(「何か」)および過程(「いかにして」)

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4.4 財政関連マネジメント改革の軌跡

 

予算にかかわる改革はすでに広く普及しており、とくに二つの外的圧力によって推進されてきた。まず外的圧力の一つは、マクロ経済的な理由から公共支出の伸びを制限することだった。明らかに、これは経済の好況不況の繰り返しと特定経済の強さもしくは弱さとともに、上下する。たとえば、ノルウェーだが、この国は人口が少なく、海底油田の原油と天然ガスから莫大な収入があるため、予算に関わる圧力は、本書が選んだ他の十ヶ国のどの国よりも弱い。第二の圧力は、公共部門における実績向上のための圧力である―これは、予算や財政に関わるマネジメントであり、高効率化というか有効性の向上、あるいは高品質化、あるいはその3つが混じり合って刺激を与えるか、もしくはそれらをむりやり押し上げる―。

 

これらの圧力は、ひとまとめにして考えると、結果的に予算の範囲と目的を膨張させるものへと到達する。予算編成が、主として年間の財政配分を調整して漸増させ、適法化され、立法府に対して説明可能であるようにする過程だという状況に代わり、別の過程―計画の策定、作戦のマネジメント、および業績測定―と密接に絡み合うようになった。こうした異なる制度との一体化が、各国に共通する目標であった(Bouckaert and Van Reet, 1998; LE Loup, 1998; Pollitt, 1998b)。ガイデエン(Gaiden, 1998)は、この予算案の範囲拡大と複雑化について、「超予算」の現れと言った。同様に、財政関連のマネジメントは、かつては財政関連マネジメントの専門家の分野であったが、今では大半ではないにせよ大勢の中間管理職者と技術職の人々の訓練と職業的社会化の中の一項目となった(オーストラリアとイギリスにおけるイニシアチブについては『Zifcak, 1994』を参照のこと)。たとえば、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのイギリスにおける地方学校管理イニシアティブ〈the Local management of Schools Initiative〉を検討してみると、地方自治体から個々の学校に予算案が委任されるようになったことにより、大半の学校長は好むと好まざると予算の管理者と化した(Pollitt, Birchall and Putman, 1998, Ch.6)。

 

‘経費節減’という目標のために尽力する改革は、業績向上を推進するという任務を課された改革の実行者にかならずしも適した仕事ではなかった。たとえば、ある政府が支出に関わる圧力に対して示す最初の反応は、「チーズの一切れ」、すなわち中央政府の財政関係省庁の支配を強めて上意下達的な方法で事業を削減しようとすることに対する反応である。こういう反応は、とくにカナダ、オランダに見られた。アメリカ合衆国の会計検査院は、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、メキシコおよびイギリスの予算関連の反応の研究において、以下のように結論している。

 

 

 

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