ウ. 苦情の概要と対応
電話相談は1998(平成10)年11月から7か月間、34件、そのうち、契約施設の関係者からは4件である。施設での面接相談、ヒアリング相談の相談件数は一度、全施設を対象として行われている。そこでは利用者や家族からは施設のサービスヘの改善要望、施設長からは介護保険についての相談などもあった。
施設が独立した外部チェック機関と契約して、施設のサービスの質や人権擁護を保障するという仕組みは外部監査制の客観性を高める意味とも似通う。また、こうしたネットワーク型オンブズマンは、弁護士のような専門性や社会に対して公表できる能力が必要となってくる。湘南ふくしネットワークも全国的にオンブズマン機能の展開や啓蒙活動を行っており、あいち福祉オンブズマンも中部地域で同様な活動を展開していくそうである。こうした活動が全国的にネットワーク化されたときにもっと大きな力を発揮することになるであろう。
(3) 市民主体型の「民間福祉オンブズパーソン」の設置 ―東久留米市―
ア. オンブズマン制度導入の背景
東京都東久留米市では、市民の視点で市民の手によって福祉サービスに関する苦情を処理する「東久留米民間福祉オンブズパーソン制度」を平成12年4月に発足させた。この制度は、三鷹市、中野区などの行政主導型オンブズマン制度や、契約型の湘南福祉ネットワーク、施設単独型のオンブズマンと違い、市民参加のオープン型を目指した制度設計である。
オンブズマン制度を設置するきっかけになったのは、平成10年6月の中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会が中間報告を発表し、基本的に福祉を「措置」制度から「利用」する制度へと方向転換を示したことに端を発し、社会福祉協議会に福祉サービスの利用者の権利擁護ならびに苦情処理の役割を求められることから、検討が始まった。この役割を調査・検討するために、翌月の7月に社会福祉協議会が学識経験者、弁護士、福祉関係者、市民、ジャーナリストの7名からなる「民間福祉オンブズパーソン調査会」を設置し、11回に及び調査研究会や学習会、市民説明会などを重ねながら準備を進めてきた。この調査研究の間、調査会会長の職を務めた矢倉久泰氏(現組織委員会会長)は、「この制度をつくるに当たっては、湘南福祉ネットワークや中野区などの先進事例を勉強し、それぞれの長所をとりいれながら私たち独自のものにしていきたい」と語っている。そして、1年後の平成11年7月に東久留米民間福祉オンブズパーソン制度設置要綱、東久留米民間福祉オンブズパーソン組織委員会運営規則、民間福祉オンブズパーソン業務規定、登録契約書の4つからなる答申を提出し、平成13年4月に発足した。