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消波ブロックの効果について見てみましょう。これは植生を見ると良くわかります。消波ブロックが無いところは植生が随分と後退しています。これはどうしてかというと、消波ブロックが無い状態で今日のような波の高い時は、大量の海水がここへ上がってきます。それを越波(えっぱ)といいます。植物としてはどんどん前進したいけれども、目の前に大きな塩水の水溜まりがあっては進出できない。よく見ると消波ブロックのあるところは前進できている。ということは確かに消波ブロックは波を消しているということが、この植生帯の分布を見るだけでも良くわかります。

しかしこの消波ブロック、波を消すにはすごく効率がいい反面、別の問題もあります。それは砂浜で通常ゆっくりと波が砕けて消えるのに比べると、20倍くらいしぶきが出るのです。短時間に短い距離で波のエネルギーを一気につぶすわけですから仕方ないんですが、もし風が吹くと、大体内陸に1〜2kmしぶきが飛ぶんです。海岸沿いにあるたくさんの公共施設、道路ですとか、特に橋梁が、塩分をかぶって耐久性が非常に悪くなっている。今、日本海側の道路ではそれが大きな問題となっているんです。

 

また、別の問題もあります。消波ブロックの設置工事は、通常は一般公共事業、要するに海岸事業として国のお金で造ります。一般にこういう公共事業の構造物は、30年を耐久年月として造るわけですが、実際は、下が砂地だと耐久年月より先に砂の中に沈んでしまうという問題があります。例えば1m50cmぐらい沈下してしまうと、もう消波効果を発揮しなくなるわけです。それでは困るのでブロックをさらにかさ上げすることになります。それに要する費用は、災害復旧、つまり国家予算ですと補正予算に計上されている災害復旧、つまり予備費として、当初予算には計上されていないけれども、補正予算で計上されて、本当にそれが必要かきちっと査定を受けて、それで予算がおりてきて、工事が行われるんです。

 

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消波ブロックと植生分布

消波ブロックの効果は植生分布を見ると顕著である。

 

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消波ブロックで砕ける波の飛沫

 

テトラポッド

1949年フランスで発明され、我が国にもすぐに導入された。テトラポッドは株式会社テトラの登録商標で、他メーカー製のものも含めた一般的な総称は「消波ブロック」という。形状、重量もさまざまで、用途に応じて使い分ける。

 

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