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それは、おごりが入っていますよ、必ず。というのは、その行政のやっている公共事業は、誰のお金でやっているかといったら、納税者ですよね。だとすると、ここのところで、やはりそういう人を放っておけと言うんじゃなくて、その人たちもレベルの水準を上げるような努力を技術者が、これは行政の技術者とかいうんじゃなくて、コンサルタントであれゼネコンであれ、何でもいいんですよ。そういう人々ができる範囲内で、日頃からそういう情報交換をやって、互いに海をよくしようというスタンスで議論を常々やっていく。なんか工事したいから摺り寄っていってやるというのは、これは「説得工作」というんです。そうじゃなくて、日頃からパイプをつくって議論しておけば、信用できますよね。そういう状態にたぶんなっていかなければならないだろうと思います。

それから7番はイーラー先生が言っていたとおりで、多くの仕事をやるのに一人だと絶対できませんから、必ず分業にならざるを得ない。だから省庁統合をやろうが何しようが、そういうことをやっても、最終的にはセクター・バイ・セクターどうしても残るんです。そのときにやはり、我々のミッションは何なのかということを、もうちょっと高いレベルで、それぞれの価値観に基づいた提案をしてもらって、それらを公開の場で議論しながら、本当に良きものは何なのかと、それから失うものは何なのかというのをきちっと見極めて議論をしていけばいいと。これを手前味噌にやると、公開の場にたぶん耐えられないはずなんで、そこのところできちっと議論して、議論して決まったらばそのとおりやればよろしいというふうに思います。

私のような話というのは、「おまえは科学的な論議を何もしていないじゃないか」というような批判は重々承知の上で、もしそういうことをやれというならやります。科学がいかに貢献してきたかということについて。それはそれで進歩としてあるんですが、だとすると今私が申し上げたような状態が全国で起こっているとすると、そのようにしてやってきた科学とは一体何なのかということになります。いつも言っているんですけれども、英文のペーパーがこの床から天井にくっつくほどできた。それでハッピーかもしれません。しかしそういう状態における、それを対象の場としていた環境が非常に惨憺たる状態になって、sustainableの逆さまですね、次の世代に引き渡すことができない状態になってしまったら、一体何のための研究だかわからないと思いますので、本当に疲弊状態というのは実感としてわかるものですから、議論を巻き起こすためにこういうことを言いました。それで、どうも問題というのは、こういうことを言っちゃいけないとか、これは議論するのやめようよね、とかいうことをやるとまずいので、論議においては、これは憲法で許されているわけですから、きちっと議論をして、納得したらそのとおりやるという、そういう意味の議論をしたいと思うんで、ですから純粋に科学論の話じゃなくて、社会システム的な話もあえてした次第です。これは題材として使っていただければよろしくて、結論めいたことは私自身は言うほどの実力は持っていません。ただし、現場の状態をあまりに憂うがために、少し皆さんで考えていただいたらと思います。以上です。

 

 

 

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