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少しその場所について説明しますと、ノルマンディーの中で、その河口域がだいたい500haぐらい買われて守られているんですけれども、そこに行きますと、いろんな施設がありますが、まず車は絶対に近くに置かない、看板も立てない、「どうぞこちらへ来てください」というような観光的なことは一切しない。あるのは非常に厳しい一つのルールですね。キャンプはしちゃいけない、煙草は吸っちゃいけない、もちろんカンとかビンは持ち込めない、車はだめとか、いろんな規制がそこにあって、それを守りながら、鳥とか自然の音しかしない静けさの中で楽しんでいく、海岸をずっと歩いていくというようなことをやっています。

そしていろいろな修復事業もあります。たとえば、古い砂丘を守ろうということで、3年間ぐらい、そこには絶対人を入れさせない。そして自然に戻るようにしておくというようなこともやっております。また、海岸に馬や犬を連れていけるあるゾーンがございます。ここは入った者は、全部ゴミ等を管理しなきゃいけませんので、ゴミ等は何もありません。非常にきれいな海岸がそこにあります。いろいろな厳しいルールの中で、こういう環境が保護されているということが言えます。ノルマンディーのずっと向こうまで続いているんですが、海岸に打ち寄せられるゴミは一つもありません。こんな状況が果たして日本の沿岸域でつくれるかどうかというのが、非常にうらやましいといいますか、これから目指さなきゃいけないのかなと思います。

また428個あるサイトの中で最も観光客が来るモン・サン・ミッシェルというところで、これもノルマンディーのほうですけれども、ここは湿地帯をかなり守っているということで、島から見ますとすべて湿地帯なんですが、何も構造物も置かないで、変なゴミも一つもありません。そのように管理をされているのです。これはすべて住民がここを管理している一つの成果として残されているわけです。

日本では一体どうなのかということなんですけれども、日本の問題の場合、たとえば瀬戸内海には瀬戸内海国立公園というのがございます。皆さんもよくご存知のように、たくさんの島があって、海域指定等があります。陸域指定と海域指定というものがあって、これだけあります。陸上の面積は大体62,000ha。ですから、先ほどのフランスの場合のサイトの土地の所有量とだいたい一緒なんですけれども、各地に存在している国立公園がどう管理されているんだろうかということが非常に気になるわけです。実は環境庁へ行っていろいろと調べてきたんですけれども、あまりどこにどういうような国立公園があるのかというのはよくわからない。例えば大阪湾ですけれども、紀淡海峡の島は国立公園で、保護域になっております。それから、鳴門のほうですね。それから小豆島とかが国立公園がある場所ですけれども、それぞれが行ってもなかなか国立公園であるかどうかわからない。海を保護するときに、管理の具体的な表示が重要になってくる。燧灘周辺にも、たくさんあるわけです。たくさんあるんだけれども、一つ一つが管理されていないからうまく活用できていないというのがございます。おもしろいのは、調べていきますと、62,000haの中で私有地が57.6%、国の土地が14.7%。私有地が57で、国有地が14.7というのは、これはどういうことなんだろうと、非常に不思議で仕方ありませんでした。それから最も保護されているところは全体の1.6%しかないということです。62,000haの中で本当に保護されているのは1.6%しかないんです。沿岸域の環境を守っていくとき、あるいは環境学習をするにしても、こういうような国立公園をいかに使うかということは非常に重要ではあると思うんですけれども、今後そういうような管理のあり方、あるいは利用のしかたというものを考えながら、フランスのナショナルトラストに負けないようなことをやっていくことが一つの環境の管理・保護に通じるんではないかと思っています。

現在、宮島でモニタリングをし、そこにどういう自然があるかということを調査しております。いろいろな大学の学生たちを連れていって宮島のところを調べているんですが、宮島は全体が国立公園ですね。日本三景のうちの一つですけれども、保護されているのは一部分だけです。あとは管理のランクとして、一種、二種、三種といろいろありますが、沿岸域周辺は、なんと全部カキ棚で取りまかれています。漁師さんが国立公園を全部取り巻いている。ということで、ここのカキいかだのゴミが全部この島にたどり着いていて、もうこれは大変なんですね。フランスでは汀線から沖合い500メートルぐらいは海の中までちゃんと管理されていますが、日本のそういう海岸線の管理については、国立公園ですらなかなか達成できていないということで、この辺も何とかできないものだろうかと、思案しています。

ちょっと話が散漫になりましたけれども、いろんな管理の方法がありますが、まず使える国立公園的なところを対象にして、これからの環境の管理のあり方を、市民と一緒にやっていけるような、そういうものを提案できればいいかなというように思います。

以上で終わります。どうもありがとうございました。

 

 

 

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