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1999年(平成11年)

平成10年門審第19号
    件名
油送船清信丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

畑中美秀、西山烝一、岩渕三穂
    理事官
根岸秀幸

    受審人
A 職名:清信丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷中央部船底に凹損及び亀裂並びに推進器翼に欠損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月24日23時05分
福岡県地ノ島
2 船舶の要目
船種船名 油送船清信丸
総トン数 699トン
全長 76.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット
3 事実の経過
清信丸は、船尾船橋型の油送船で、A受審人ほか6人が乗り組み、空倉のまま、船首1.1メートル船尾3.3メートルの喫水をもって、平成9年9月24日14時50分長崎県松島港を発し、大分県大分港に向かった。
A受審人は、19時50分ごろ土器埼北東方2.7海里の地点で、一等航海士と交替して単独で船橋当直に就き、玄界灘を北上して22時05分筑前相ノ島灯台から327度(真方位、以下同じ。)2.4海里の地点に達したとき、針路を倉良瀬戸の一ノ瀬灯浮標に向く051度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの潮流により2度ばかり右方に圧流されながら10.2ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
定針後、A受審人は、舵輪後方のいすに腰を掛けて見張りに当たっているうち、当直を交替したころ吹いていた強風も収まり、通航に慣れた海域であることや周囲に他船を見かけなかったことから気が緩み、眠気を催すようになったが、倉良瀬戸の通峡を控え、まさか居眠りすることはないと思い、いすから立ち上がって身体を動かすなどして眠気を払拭することや機関当直者を呼んで2人当直とするなど居眠り運航の防止措置をとることなく続航し、22時40分大島の曽根鼻南方2.2海里の地点に達したころ、左舷船首方にオノマ瀬灯浮標の赤い灯光を視認したものの、いつしか居眠りに陥った。
こうして、A受審人は、22時47分曽根鼻を左舷方1.4海里に航過し、倉良瀬戸への転針予定地点に至ったものの、居眠りしていてこれに気付かず、針路が転じられないまま地ノ島に向首して進行中、23時05分倉良瀬灯台から144度1.54海里の同島南西岸に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、左舷中央部船底外部に凹損及び亀裂並びに推進器翼に欠損を生じたが、サルベージ船により引き降ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、倉良瀬戸に向け玄界灘を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、転針予定地点で針路が転じられないまま、地ノ島南西岸に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たり、倉良瀬戸に向け玄界灘を北上中、いすに腰掛けて見張りに当たるうち眠気を催した場合、機関当直者を呼んで2人当直とするなど居眠りの防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはないと思い、機関当直者を呼んで2人当直とするなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、転針予定地点で針路が転じられないまま、地ノ島南西岸に向首進行して乗揚を招き、左舷中央部船底外板に凹損及び亀裂並びに推進器翼に欠損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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