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対象車両については、平成元年度調査では、鉄道(都市間、都市内)、バス(都市間、都市内)、タクシー(乗用車タイプ、バンタイプ)であったが、今回は、それに旅客船・フェリーと福祉輸送用車両が新たに加わった他、鉄道の中に新交通、LRT(新型路面電車)が加わり、更に、バスの中に中型・小型ノンステップバスと観光バスが加えられた。

 

4. 車両構造の改善点に関する利用者要望調査

 

現在の鉄道・バス・タクシーなどの車両について、身体障害者や高齢者などがどのような構造上の改善を要望しているかを把握するため、全国の障害者団体、高齢者団体のご協力を得て、通勤・通院、買物等に使用する交通機関の「日常アンケート」と出張や旅行など都市間の移動時に使用する際の交通機関の構造についてお聞きする「旅行アンケート」を実施した。アンケートの配布・回収状況は、全体で1,200件を配布し、537件(回収率44.8%)を回収した。

その結果、障害別・交通機関別・部位別に様々な構造の改善を希望する意見、要望等が収集できた。日常アンケートでは、通勤鉄道の「乗降口の段差、すき間の解消」が、路線バスについては、「乗降口のステップ」が、タクシーについては、「屋根が低く乗りにくい」が最も改善要望が多かった。一方、旅行アンケートでは、都市間鉄道の「乗降口の段差、すき間」が、都市間バスについては、「便所内のスペース」が、旅客船・フェリーについては、「乗船口の段差、すき間」が最も改善要望の多い部位であることが分かった。

 

5. 車両構造の改善点に関する事業者要望調査

 

公共交通のサービスを提供する交通事業者、車両の製造メーカー等に利用者からの要望や実際の現場での対応など、全17社に対し、現モデルデザイン(平成元年度版)の変更要望などをヒアリング調査した。

その結果、鉄道については、都市内・都市間ともに段差20mm、すき間22mmは、厳しすぎて非現実的であるとして、新たな基準の設定が要望されたこと。路線バスについては、座席の大きさ、立席ポストの本数・パイプの径、降車ブザーの位置・個数、車いすスペースの広さ、車内情報提供のLEDに関する要望が強いこと。タクシーについては、床が低くフラットな乗りやすい車両の開発に対する要望が多いことなどが把握できた。

特に、鉄道、バス、タクシーの全てに共通して、公共交通で対応することが望ましい、車いすの大きさ、形状、重量並びに車いすに対応した固定装置について、本研究で1つのモデルデザインを提示されることが最大の要望事項であることが分かった。

 

6. 欧米の先進事例調査

 

公共交通機関のバリアフリー施策が進んでいる欧米諸国、中でも先進事例の多い北欧諸国、西欧諸国と、アメリカ、カナダを対象国として、公共交通並びにSTS、パラ・トランジット等の車両構造、デザインについて調査し、交通機関別、部位別、装置別に我が国の参考となる事例を紹介する目的で、次のとおり、各国の中央政府、自治体、交通事業者等を訪問した。

・訪問組織及び試乗交通

(欧州の組織)

英国環境・地域・交通省、ロンドン交通局、スウェーデン産業・雇用・情報省、大ストックホルム圏運輸会社、シリアライン社、大コペンハーゲン交通公社、オーストリア視覚・聴覚障害者サービス協会福祉輪送会社、ウィーン市交通局、ドイツ鉄道会社

(試乗交通)

ロンドン地下鉄、ドックランド新線、ステーション・リンクバス、ロンドンタクシー、ストックホルム地下鉄、ノンステップLRT、ノンステップ連節バス、サービスライン、アーランダ・エクスプレス、超大型フェリー、DABバス、ハンディキャップ・サービス、ウィーンのSTS、ウィーン地下鉄、LRT、ドイツのスロープ付近郊列車、ストラスブール・スーパートラム(LRT)

 

 

 

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