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3. オニヒトデの生物学的特徴

 

6〜7月ごろに雌雄のオニヒトデは放卵・放精をします。一匹のオニヒトデは1年に数千万個の卵を生みます。受精卵は発生してプランクトン幼生になります。数週間は海面近くを浮遊して珪藻や渦鞭毛藻などの植物性プランクトンを食べていますが、その後サンゴ礁の上に降りてきて定着して0.5mmくらいの稚ヒトデに変態します。冬頃まではサンゴではなく、石灰藻を食べて成長します。冬になると直径が8−10mmくらいに成長し、サンゴ礁にふんだんにあるサンゴを食べ始めます。オニヒトデは、効率良く餌を採るために、サンゴの組織をついばんだりかじり取ったりするのではなく自分の胃をからだの下側にある口から外に出し、サンゴの組織を直接消化吸収します。1匹のオニヒトデは1年に5−13m2のサンゴを食べるといわれています。しかし、飢えにも強く、半年以上何も食べずに生存します。好みのサンゴは、成長の速いミドリイシ、コモンサンゴなどです。

 

からだは柔軟性に富み、狭い隙聞にも入り込むことが出来ます。密度がそれほど高くないときは、昼の間はサンゴの枝の間やテーブル状サンゴの陰に隠れたりしています。これは、若くて小さなオニヒトデにこの傾向が強く現れるといわれています。からだの表面を鋭い有毒の棘で武装し、さらにサポニンと呼ばれる化学物賃を含んでいますので他の生物はあまりオニヒトデを食べません。天敵としてホラガイなどが知られているが数が少ないうえにオニヒトデだけを食べるわけでもありませんから大量発生を防ぐ役には立ちそうもない。オニヒトデは成体になると、どんな動物にもあまり攻撃されることはなくなります。また、プランクトン幼生時代や稚ヒトデの時代のオニヒトデがどんな動物に食べられているのか良く分かっていません。

 

オニヒトデは、生後2年の夏には条件が良ければ20cmほどに成長し、放卵・放精を行うまで成熟するものも出てきます。オニヒトデは最大直径80cmのものが発見されたことがあります。オニヒトデの寿命は水槽での飼育実験から7−8年と見積もられています。

 

4. 沖縄県のオニヒトデ大量発生問題に対するポリシー

 

沖縄県がオニヒトデの大量発生をどのように捉えているかを明確に示した文書は見当たりません。しかし、同県はオニヒトデ駆除を行う事業主体に補助金を交付してきました。ひとつは漁業に被害をもたらす「有害水産動植物」を駆除するための事業として、もうひとつは「国立公園等の海中のサンゴ礁景観を保護」するために、駆除事業を実施する市町村や漁業協同組合に対し補助金を交付してきました。このことから、オニヒトデの大量発生は漁業の妨げとなり、サンゴ礁の優れた水中景を損なう有害なものであるために積極的にこれを駆除しようとする沖縄県の姿勢が伺われます。

 

 

 

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