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表2. 駆除個体数と要した費用

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*:直接経費(人件費は15,000円/人/日として計算、保険料3,000円//、傭船料30,000円/6人/日として計算;潜水機材、駆除用具、交通費、運搬費、処分に係る費用は含まない。また、悪天候による作業中止、駆除域・規模・効果についての情報を得るための調査にかかる費用は含まない。)

 

(4) 考察

まず、今回の費用を概算してみる。例として、一度だけの駆除を行ったA域について見てみると、人件費(今回はボランティアとしての参加であったが、ダイビングショップから聴取したインストラクター派遣費用を用いる)、保険料と傭船費で約28万円の費用が発生する。これにより約200mの幅の裾礁から263匹のオニヒトデが取り上げられた(約1,000円/匹)。さらに駆除前後のオニヒトデ個体群密度観測にかかる費用(研究員2人×2日、傭船料一日として)がさらに15万円ほと加わり、駆除一匹あたり約1,600円となる。なお、今回の駆除費用は、取り上げたオニヒトデの運搬・処分や、駆除の対象時期・場所を決定するためのモニタリングにかかる費用は考慮に入れていない。そのため実際にかかる費用はさらに高額となる。

一方、3回に分けて駆除を行った場合、予測不可能な要因、特に駆除域外部からのオニヒトデ成体の移入により、駆除個体数が大きく変動し、それにつれてオニヒトデ一匹あたりの駆除のコストも増減することが示された。

過去に報告されているコスト、例えばグレートバリアーリーフの例(A$6-17(A$1=\80), Zann & Weaver 1988;A$36, Johnson,Moran & Driml 990)に匹敵する。Johnson, Moran and Driml(1990)は、彼らが得た経費の額に基づいて、人力によりオニヒトデの個体を対象とした駆除は失敗におわるだけでなく高価なものにつくと指摘している。数人のダイバーが1ヶ月に一回くらいの頻度で駆除をおこなう体制を整えると仮定すれば、オニヒトデ個体群をコントロールできる面積は数ヘクタールの規模を上回ることはないであろう。

今回は、安全のために当地で通常用いられている駆除方法(取り上げ式)を採用した。過去の報告によれば水中での連続注射器による薬品注入が最も処理のスピードが速いと言われている(Kenchington & Pearson 1982)。注射液についても、過去に使用された生物に対する影響の大きい硫酸銅のようなものではなく、現在は重硫酸ナトリウム溶液が安価で取り扱いが容易で他の生物に対する影響がないとされグレートバリアーリーフでは多用されている(Lassig 1995)

 

 

 

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