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b. 捕食者除去説

オニヒトデの幼生あるいは成体の捕食者が人為的に除去されたためオニヒトデの生存率が高まったとする説。オニヒトデの密度はその幼生の捕食圧によって大きく変動する可能性を示す証拠は多い。しかし、この説は、年による変動を説明しない。また、多くの場合に2次的な大量発生が第1次の大量発生に続いて生じる理由を説明しない。

 

c. 幼生加入仮説

オニヒトデは多卵であるから、極小さな生存率の変化が加入数の大きな変化をもたらす。生存率を高めると考えられる環境要因には、低い塩分(約30%)、高めの水温(約28℃)、富栄養化などが挙げられる。幼生が加入に成功するためには複数の要因の組み合わせが重要になる。つまり、大量の降雨があるなどして富栄養の淡水が沿岸海域に流入し、オニヒトデ幼生の餌となる植物プランクトンが増殖し、そこに幼生の供給があり、変態するときには適した底着基盤がある必要がある(Black, Gay & Andrews 1990, Dight, Bode & James 1990, Dight, James & Bode 1990)。これらのどれが欠けてもオニヒトデの加入は起こらない。これらをすべて満たすチャンスが低いことが、大量発生が稀にしか起こらないことを説明する。また、降雨との相関は統計学的にも有為であった(Birkeland 1982)。この点は、上記の集合説や捕食者除去説に比べてこの説の優位性を示す。ただし、この降雨と陸水の影響は、火山島や大陸棚のサンゴ礁には当てはまるが、環礁には当てはまらない。

 

これらの要因は全て「自然」である。しかし、人為的な影響がその程度と頻度を増大することは十分にありえることである。例えば、森林の伐採や、農地の不適当な開発で、栄養塩に富んだ淡水がサンゴ礁に流入したり、埋め立てなどの沿岸開発がオニヒトデ幼生の捕食者であるサンゴ等の定着牲の濾過食者やスズメダイ等のプランクトン食者を減少させたりすることが影響を及ぼしている可能性がある(Birkeland & Lucas 1990)。

 

(7) これまで採用された駆除方法

体制

これまでオニヒトデの駆除の実施方法としては、漁業者なとから買い上げ方式、ボランティアによる駆除、専門家チームによる駆除などが行われてきた。買い上げ方式ではオニヒトデの個体群を十分低下させるのが困難であると古くから指摘されている(Yamaguchi 1986, 山口 1986)。また、ボランティアによる駆除の効率も疑問視され、オニヒトデの生息場所や行動にたいする知識とダイビング技術を備えた人材を確保する必要が強調されてきている。

 

 

 

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