日本財団 図書館


それは解剖実習も半分以上が過ぎた合同慰霊祭の時のことでした。そこには御遺族の方も多く参列しておられました。その姿を見た時、私達が解剖させて頂いている御遺体の方が生前、私達と同じような生活をしておられたことが、とても身近に感じられたからです。

この解剖実習で学んだことをこれからの学習に生かし、将来、社会に奉仕し、多くの人の心に安らぎをもたらすことが、献体して下さった方やその御遺族の方の気持ちに報いることだと思います。

最後になりましたが、私に医療に携わる者としての心と知識を与えて下さった方に心より感謝の想いを込めて、御冥福をお祈り致します。

 

解剖学実習を体験して

下野昌之

 

実習の予定時間数の大半を消化した現時点で、考えるところを幾つか述べてみようと思います。もし、今「あなたは解剖学実習で何を学びましたか」という問いが発せられたなら、私はきっとこう答えるでしょう。「いのちの尊さです」と。ご遺体を扱う実習において、生命の大切さを再認識したという話に疑問を投げかける人もいるでしょう。確かにホルマリンなどで一定期間保存されていたご遺体から"生命のにおい"を感じとることは難しいでしょう。これは、肌の色つや、感触などの例を挙げるまでもありません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION