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最近の国際海事機関(IMO)の動向

 

運輸省海上技術安全局安全基準課

国際基準調整官 池田陽彦

 

1. IMOにおける条約改正等の現状と我が国の対応

 

(1) IMOにおける条約改正等

IMOにおいては、これまで重大な海難事故の発生等を契機とした規制の強化(タンカーのダブルハル化、RoRoフェリーの安全性強化、ばら積み貨物船の安全性強化等)、近年の技術的進歩を踏まえた規定の総合的な見直し(第III章(救命設備)の総合見直し、第II-2章(防火・消防設備)の総合見直し、第VI章(航海設備)の総合見直し等)、海上安全及び海洋汚染防止のための新たな規制体系の制定(HSCコードの強制化、ISMコードの強制化、MARPOL条約附属書V(船舶からの大気汚染の防止)の制定等)が進められてきた。

(2) 旗国の責任に関するIMOの活動

また、IMOは、サブスタンダード船の排除のためには旗国の条約履行を確実にする必要があるとの認識のもと、旗国小委員会(FSI sub-committee)を新たに設けて旗国の責任に関する審議を強力に進めるとともに、旗国代行機関の承認に関するガイドライン、旗国代行機関の検査・証明に関する基準、旗国がIMO文書を実施することを支援するための指針等の総会決議を採択した。

さらにIMOは、旗国の条約履行を補完する措置としてPSCの強化を進め、SOLAS条約及びMARPOL条約に操作要件に関するPSCに関する規定を追加するとともに、国際的に統一されたPSCの実施を図るため、PSC手順書に関する総会決議を定めた。

(3) 我が国の対応

これらのIMOの活動に対し、我が国は、規制強化の必要性、関係者への影響、実行可能性等を総合的に判断して我が国の対処方針を策定し、造船研究協会のRRの調査研究成果等を活用しながら、IMOの結論が妥当なものになるよう最大限努力してきたところである。

また、我が国のIMO対応の基本的方針として、行政需要の高いもの又は技術的能力の高いものについては、我が国から基準原案の提案を行い、IMOの活動をリードすることとしている。具体的には、現在、「ナホトカ」号事故の再発防止策としての老朽船対策、TBT塗料の世界的な禁止に向けた国際的な規制の導入、防火構造基準の総合見直し等について、積極的に取り組んでいる。

さらに旗国の責任に関する議論についても、FSIの活動を支持し、PSCの強化等に対し積極的に対応してきた。

(4) IMOの検討作業の進め方

一方、IMO自身の作業の進め方については、IMOの参加各国多数が条約改正提案を行うことや小委員会レベルで条約改正につながる作業が開始されることなどから、条約改正が頻繁に行われるといった状況、さらに、膨大な作業量がIMOの各委員会、小委員会に課せられ、重要な案件に十分な審議時間が投入できないといった問題点が指摘され、IMOの海上安全委員会(MSC)及び海洋環境保護委員会(MEPC)は合同で、委員会及び小委員会の作業に関するガイドラインを定め、必要性の十分な説明がなされない条約改正の検討が開始されたりしないよう、厳しい手続きが定められた。

 

 

 

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