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(中国)中華人民共和国の1992年領海及び接続水域法第6条は、「外国の非軍事用船舶は、法に従い中華人民共和国の領海で無害通航権を有する」とし、一方「外国の軍事用船舶は、中華人民共和国の領海に入域するために中華人民共和国政府の許可を得なければならない。」と規定して、外国軍艦には領海の無害通航権は認めないという立場を明確にしている。中国の1958年の宣言及び1983年の海上交通安全法が「軍事目的の外国船舶は、領海に入域するには中華人民共和国政府の承認を必要とする」と定めていた態度を、この1992年法が再確認したものである。中国では、1840年のアヘン戦争以後の外国軍艦による海域侵犯がくりかえされてきた歴史をふまえ、自国の防衛と安全保障に高度なプライオリティを与えたものと説明されている(40)。このような中国の主張に対しては、米国及び英国は抗議を表明している(41)

このほか、ベトナム及びビルマ(ミャンマー)の領海に関する国内法は、領海に対して「完全かつ絶対的な主権を行使する」という文言をおいており、いずれも、外国軍艦の領海通航に対しては、事前の許可を要求していると言われている(42)

 

(2) 軍艦の通航権を認める国

他方、軍艦を含むすべての外国船舶は領海内において無害通航権を持つという立場を明らかにしているのは、先に見た各国の中ではタイ一カ国だけである。1993年2月18日、の「無害通航に関するタイ国外務大臣声明」の中で、次のように述べている。「数カ国が、現在、自国の海域における外国船舶の通過の権利及び航行の自由を制限するような法令を制定していることに注目してきた。この問題に関するタイ国の立場を明らかにしておきたい。1.確立した慣習国際法の規則及び国家慣行によれば、1982年国連海洋法条約が認め法典化したように、すべての国の船舶は、他国の領海において無害通航の権利、国際航行に使用される海峡において通過通航の権利、そして排他的経済水域において航行の自由を有する。2.軍艦、商船及び漁船を含むすべての船舶は、その意図する通航について、関係沿岸国に事前の通告を行い又は事前の許可、承認又は同意を得ることなく、その権利及び自由を行使することができる。3.したがって、このような権利及び自由を制限するようないかなる法令も、慣習国際法に違反し、さらに関係各国が1982年条約に署名した際に負うこととなった責務に反するものである。(43)

 

 

 

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