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逆に、海岸の低潮線を基線とする通常基線を使用している国はほとんどなく、タイがほんの一部の海岸線に使用しているにとどまる。そして、これら各国の主張する直線基線は、マレーシアを除いていずれも他国からの抗議を受けており、その意味で、各国の内水を含む領水の範囲が他の諸国から認められて確定しているとは言えないのであって、かなり不安定な状況にあると見なければならない。

さらに、フィリピン及びインドネシアは群島国家として、群島基線に囲まれた群島水域を設けており、なかでもフィリヒンの主張する領海はいわゆる条約水域として群島基線から測定しても百数十カイリの距離に及ぶ海域であり、群島基線そのものの問題も含めて、なお流動的であると言わざるを得ないであろう。

 

3. 領海における通航権

 

(1) 軍艦の通航権を否定する国

(韓国) 韓国の「領海及び接続水域法」第5条(1)は「外国船舶は、その通航が韓国の平和、秩序及び安全を害しないかぎり、韓国の領海の無害通航権を有する。外国の軍艦又は非商業目的で運航する政府船舶が領海を通過しようとするときは、大統領令の定める条件に従って、関係当局に事前通告(prior notice)を行わなければならない」と定めて、軍艦、非商業目的の政府船舶の領海通航には事前通告を要求している。しかし、実際上の運用において、大統領令15133号(1996.7.31)第4は、外国の軍艦及びその他の非商業目的の政府船舶は、韓国領海への入域及び通過に先立って通告し許可を受けるように要求し、法律の規定以上の実行を行っている。これに対して、米国は、韓国が最初にこれを規定した1977年領海法の段階で抗議し、国連海洋法条約は無害通航を行うために領海に入るいかなる種類の船舶に対しても沿岸国が通告又は許可の要件を求める旨を規定していないと指摘している(39)

 

 

 

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