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そして、群島の各島の周囲の水域、その間の水域及びそれを連結する水域は、その幅及び大きさにかかわりなく、フィリピンの内水の部分を構成する」と規定し、この直線基線によって群島内に囲いこまれた水域がフィリピン内水であるとしている(35)

その後、フィリピンは、1984年5月8日、国連海洋法条約の批准書を寄託した際に、署名時の宣言を再確認した(36)。それによれば、1]条約署名は、いかなる形であれフィリピンの主権的権利を害し、損なうものではないこと、2]条約署名は、いかなる形であれ米国から承継したフィリピンの主権的権利に影響を及ばさないこと、3]〜4](省略)5]本条約は、いかなる形であれフィリピンの関係法及び大統領宣言を修正するものと解釈せず、フィリピン政府は、フィリピン憲法に従い、関係法令を制定、改正する権利及び権限を維持し、留保すること、6]群島航路帯通航に関する本条約の規定は、群島国として航路帯に対するフィリピンの主権を失わせ又は害するものではなく、主権、独立及びセキュリティを守るため立法を行う権限を奪うものではないこと(この点については、後述)、7]フィリピン憲法の下で、群島水域の概念は内水の概念に類似し、この水域と EEZ 又は公海を結ぶ海峡では、外国船舶の国際航行のための通過通航権は排除されること、8](省略)、を述べていた。このフィリピンの群島水域を内水と性格づける宣言に対しては、米国は、1961年及び1969年の抗議を改め、1986年1月29日に再抗議し(37)、オーストラリア、ブルガリア、白ロシア、チェコスロバキア、ウクライナ、(旧)ソ連を含む他の国も抗議していると言われる(38)

 

(11) まとめ

わが国周辺諸国が主張する領海の範囲を概観してきたが、シンガポールとフィリピンを除いて、いずれも領海幅員は12カイリに統一されているということができる。しかし、各国の主張する領海基線を見れば、一部不明確な部分や隣接国との境界が未確定な部分があるが、朝鮮半島から中国、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシアと続く大陸の海岸線は、ほとんどの海岸沖合に直線基線(ないし歴史的水域を前提とする湾口閉鎖線)が設定され、場所によっては大陸の陸地から数十カイリ沖合に基線が設定されている海岸線も少なくないことになる。

 

 

 

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