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(14) 1992年のフランス刑法典は、113-2条1項で「共和国の領土内で行われた犯罪に対しては、フランスの刑罰法規を適用する。」と規定し、同条2項で「犯罪を構成する事実の一が共和国の領土内で生じた場合には、犯罪は、共和国の領土内で行われたものとする。」と規定している。

(15) スイス刑法7条1項は、「重罪又は軽罪は、犯人がそれを実行した場所及び結果の発生した場所で行われたものとみなす。」と規定し、同条2項は、「未遂は、犯人がそれを行った場所及び犯人の意図によればその結果が発生するはずであった場所で行われたものとみなす。」と規定している。

(16) イタリア刑法6条1項は、「イタリア国内で罪を犯した者は、イタリアの法律に従って処罰する。」と規定し、同条2項は「罪を構成する作為もしくは不作為の全部もしくは一部がイタリア国内で行われたとき、又は作為もしくは不作為の結果がイタリア国内で発生したときは、その罪は、イタリア国内で犯したものとみなす。」と規定している。

(17) オーストリア刑法67条2項は、「行為者は、作為に出た場所又は作為に出るべきであるのに出なかった場所、所為像に相応する結果の全部又は一部が発生した場所、又は行為者の表象に従えば発生するはずであったのに発生しなかった場所で、刑を科せられている行為をしたものとする。」と規定している。

(18) 最決平6・12・9刑集48巻8号576頁は、正犯の実行行為が日本国内で行われた場合には、それに対する幇助行為が国外で行われたとしても日本国内で罪を犯したものであることを肯定している。事案は、日本人Aが日本国内へ覚せい剤を密輸入するにあたり、台湾人のX、Yが覚せい剤を入手して台湾においてXに交付したというもので、X、Yの幇助行為も国内で行われたものとして、覚せい剤輸入罪の幇助犯が成立するとされた。なお、覚せい剤取締法については、本件行為後の平3年の改正によって世界主義が採用され、行為地の如何を問わず適用されるようになったので、このケースについては立法的に解決された。最高裁決定の評釈として、門田成人・平成六年度重要判例解説140頁、大渕敏和・最高裁判所判例解説刑事編[平成6年度]230頁以下、同・ジュリスト1064号66頁、渡部惇・研修560号17頁など。

 

 

 

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